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クルマにおける排気量とは?

排気量(ふりがな: はいきりょう、英語: Engine Displacement、仏語: Cylindrée)は、エンジンのシリンダー内部でピストンが動く際に取り込まれる空気と燃料の体積のことです。通常はリットル(L)や立方センチメートル(cc)で表され、排気量が大きいほどエンジンが多くの燃料と空気を取り込み、大きなパワーを発揮することができます。スポーツカーやSUVでは排気量の大きなエンジンが好まれる一方、近年では燃費や環境性能を考慮した小排気量ターボエンジンも増えています。

排気量の基本的な仕組み

エンジンの排気量は、エンジンのシリンダー内の容積によって決まります。シリンダー内でピストンが上下することで、空気と燃料が取り込まれ、燃焼されることでエンジンの動力が生まれます。このピストンが動く範囲の体積、つまり1回の動きでシリンダー内に取り込まれる空気と燃料の量を排気量と呼びます。排気量が大きいほど、エンジンは多くの燃料を燃焼させ、より強力な動力を生み出すことができるのです。

具体的には、エンジンに搭載されているシリンダーの数や、ピストンの直径とストローク(ピストンの上下運動の距離)によって排気量が決まります。例えば、4つのシリンダーを持つエンジンで、1つのシリンダーあたり500ccの容量がある場合、エンジン全体の排気量は2リットル(2000cc)となります。この数字が大きいほどパワフルなエンジンであるとされますが、燃費や環境への影響も考慮する必要があります。

排気量の歴史とその進化

自動車の初期には、大排気量のエンジンが主流でした。エンジン技術がまだ未熟であったため、十分なパワーを得るためには多くの燃料を燃焼させる必要がありました。例えば、クラシックカーや戦前の自動車には、排気量が6リットル以上という非常に大きなエンジンが搭載されていることが一般的でした。

20世紀後半になると、燃費性能環境問題が注目されるようになり、エンジンの排気量は段階的に小型化されていきました。同時に、エンジンの効率を向上させる技術も進化し、小排気量でも高出力を得られるターボチャージャーやスーパーチャージャーが登場しました。これにより、燃費の向上とパワーの両立が可能になり、従来の大排気量エンジンから小排気量ターボエンジンへのシフトが進んでいます。

現代の排気量の使われ方

現在では、排気量はエンジンの性能を示す一つの要素として考えられていますが、それだけでクルマの優劣が決まるわけではありません。以下では、現代のクルマにおける排気量の重要性や、用途に応じた選択肢を紹介します。

1. スポーツカーと排気量

スポーツカーにおいては、依然として大排気量エンジンが好まれる傾向があります。これは、自然吸気エンジンによる滑らかな加速や、高回転域でのレスポンスの良さを求めるドライバーが多いためです。例えば、フェラーリやランボルギーニなどのスーパーカーには、4リットルを超えるV型8気筒やV型12気筒の大排気量エンジンが搭載され、高速走行時のパワフルな加速を実現しています。

2. 小排気量ターボエンジンの普及

一方で、小排気量ターボエンジンが近年の主流となっています。これは、燃費性能や環境への配慮が求められる中、小型で効率的なエンジンが重視されるようになったためです。例えば、1.0リットルや1.2リットルのターボエンジンは、日常の走行に十分なパワーを発揮しながらも、低燃費で環境に優しい設計となっています。フォルクスワーゲンの「TSIエンジン」やホンダの「VTECターボ」などがその代表例です。

3. ハイブリッド車や電気自動車と排気量

ハイブリッド車や電気自動車では、排気量はやや異なる観点から考えられます。ハイブリッド車では、エンジンとモーターの組み合わせがパワートレインとなるため、エンジン自体の排気量は小さくても、モーターの補助により十分なパワーを発揮します。たとえば、トヨタの「プリウス」は、1.8リットルのエンジンと電気モーターを組み合わせ、効率的な走行を実現しています。

電気自動車(EV)にはエンジン自体が存在しないため、排気量という概念はありませんが、エンジンに代わるモーターの出力とバッテリー容量が性能を左右します。電動化の時代が進む中で、排気量に代わる新たな指標が求められるでしょう。

排気量の未来と技術的進化

排気量に関する未来のトレンドは、ダウンサイジング電動化が中心です。ターボチャージャーやスーパーチャージャーによって、排気量を小さくしつつも高出力を維持する技術が今後も進化するでしょう。これにより、クルマは燃費を向上させながらも、パフォーマンスを犠牲にすることなく運転の楽しさを提供し続けることが可能です。

また、電動化が進むにつれて、内燃機関を搭載しないEVの普及がさらに進むことが予想されます。この場合、排気量という概念が過去のものとなるかもしれませんが、内燃機関と電動モーターが共存するプラグインハイブリッドやレンジエクステンダーなどの車種では、排気量と電力出力のバランスが重要なテーマとなるでしょう。

結論として、排気量はエンジンのパワーや性能を表す重要な要素ですが、近年の技術進化により燃費や環境性能とのバランスを考慮した設計が主流となっています。これからの自動車は、排気量に頼らない新しい技術で、効率的かつ力強い走行を実現する時代へと移行


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